産業医としての生き方・働き方

産業医は、その名の通り企業で働く従業員の健康管理を行うのが役割です。
近年、過労な過度な残業による自殺などで労災認定されたり、裁判のニュースなどを目にすることも増え、世の中では働き方を見直す動きが出ています。

 

過度な労働による心身の不調、またこれらが原因による自殺などは、日本で最初に確認され、この現象はアジアの他の地域でも広まっており、「カロウシ」は今や国際的にも採用された言葉になってしまいました。
また、国際労働機関(ILO)は、過労死は日本の重要な社会問題であると報告しています。

 

大手広告代理店の新入社員や放送局職員、研修医、またオリンピックに向けた工事に携わっていた作業員の自殺等、多くの報道がありました。

 

そのため、近年では政府も過度な残業や労働時間を削減し、過労死を減らすために国を挙げて取り組みを進めています。最近では世間でも「働き方改革」という言葉も認知されるようになりました。
実際に、厚生労働省ではほぼ毎年過労死による自殺等を防ぐための施策やその効果等についても発表しています。

 

令和2年版過労死等防止対策白書

 

 

しかし、一方では過度な労働による脳・心疾患、精神疾患等による労災申請は年々増加しています。新型コロナウイルスの感染拡大による企業業績への影響も甚大で、今後、労働者の心身に及ぼす影響はこれまで以上に大きくなっていくことでしょう。

 

 

 

そこで生き方・働き方を見直そうと考える医師にとってニーズが高いのが産業医としての働き方です。

 

今後ますますニーズが高くなっていくが、なるには競争も激しい産業医

 

産業医の役割は、職場巡視や企業での健康診断の実施、衛生委員会への参加など、企業の中での産業医の役割は従業員の健康を守るだけでなく、必要があれば事業者に対し、勧告を行うことです(労働安全衛生法13条3項、4項)。

 

もともとは高度経済成長期の日本において、製造業で働く労働者の安全、健康を守ることをメインに整えられてきた産業医制度。時代も移り変わり、今では製造業などの業界に限らず、あらゆる産業・業種の職場において、過度の労働による自殺や過労死がニュースで流れていますが、このような現状から、昔のような過重な労働を是とすることはなくなり、国を挙げての「働き方改革」が進められています。

 

さらに2015年12月にはストレスチェック制度が施行されました。年1回従業員のストレスチェック状況を調査し、本人へのアラートおよび職場の環境改善に繋げることを事業者に義務付けたこの制度は、産業医によるストレスチェックの企画や結果の評価、職場改善などが業務として求められるようになりました。

 

経済産業省が実施している「健康経営優良法人認定制度」では、採用活動や株価へもいい影響があるとうたわれており、産業医や保健師による健康保持・増進の立案・検討などによって、従業員の生産性向上にもつながると言われています。実際にこれを機に産業医を採用する企業が大手を中心に出てき始めました。

 

健康経営への注目が高まりつつある中、産業医のニーズは今後大きく高まっていくことでしょう。実際に徐々に産業医の必要性が医師や経営者、国でも理解が深まりつつあり、今後、産業医の求人も増加していくものと思われますが、現時点で実働している産業医が3万人と言われているのに対し、産業医が必要な職場は16万以上と言われています。つまり、13万人以上の産業医が不足しているのが現状です。

 

ところが産業医の養成研修・講習を修了した医師は全国に約9万人いると言われていますが、3万人しか実働していません。これは産業医が「嘱託」で勤務できることにも起因します。

 

業務内容が労働者の健康診断や面接指導、カウンセリング、労働環境改善に関する助言、職場内での健康被害の状況調査、労働者への健康教育など、職場の巡視も月1回以上と少ないため、専属としてではなく、開業医や勤務医が通常の診療をやりつつ、「嘱託」として勤務しているケースが殆どなのです。しかも産業医は本業の医療機関での診療の合間に非常勤やスポットで勤務するとのイメージを持つ医師が依然多く、実働していない医師約6万人の多くが「本業(診療)が多忙で時間・余裕がない」と回答しています(日本医師会 『産業医活動に対するアンケート調査』より)。

 

そのため「専属」の産業医求人はまだ多くないというのが現状です。また産業医は「労働者数50人以上の事業所」で必要とされています。「専属」での場合は、東京や大阪、名古屋・福岡といった都市部では求人が多く、地方だと少ない状況です。そのため都市部中心の企業の産業医求人は、人気が高く狭き門です。「専属」の産業医を目指すのであれば、地方や郊外での勤務を狙うのもいいでしょう。地方や郊外だと、通勤が大変なイメージもありますが、それを考慮しても産業医としての働き方はメリットがあります。

 

 

 

 

産業医のメリット

 

・日当直がない
・勤務時間は企業が動いている日中のみ
・緊急の呼び出しもない
・週休3日以上も可
・年収も1200万円ほど

このように臨床と比べ、格段に労働時間・環境が良いためです。年収は臨床医と比べると低くはなりますが、年齢を重ね日当直が厳しくなった中高年の医師、また結婚や出産等で子育てや家庭との両立を考える女性医師にとってはワークライフバランスを考えるうえで、非常に有用な働き方でしょう。

 

産業医に適する診療科

特に診療科が決まってるわけではありませんが、厚労省の過労死等防止対策白書を見ると、精神疾患による労災申請が年々増加していることを鑑みれば、メンタルヘルスを重視した精神科医案件が増えているのも頷けます。

 

 

産業医になるためには

 

産業医となるための要件

公益社団法人産業医学振興財団は産業医となるための要件として以下の通り定めています。

 

医師であることに加え、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者(労働安全衛生法第13条第2項)。

 

具体的には、以下のとおりで規定されており(労働安全衛生規則第14条第2項)、

 

  • 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修(※)であって厚生労働大臣が指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
  •   (※)現在、@日本医師会の産業医学基礎研修、A 産業医科大学の産業医学基本講座がこれに該当します。

  • 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であってその大学が定める実習を履修したもの
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
  • 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師の職にあり、又はあった者
  • その他厚生労働大臣が定める者(現在、定められている者はありません。)

 

難しく書かれていますが、要は日本医師会か産業医科大学の研修を受けると良いということです。

 

日本医師会
産業医学基礎研修を50単位以上修了するか、それと同等以上の研修を修了することで、日本医師会認定産業医の称号と認定書が付与されます。
有効期間は5年間。その後は産業医学生涯研修を受けて資格を更新することになります。

 

産業医科大学
毎年4月から約2カ月間にわたって産業医学基本講座を開催しており、修了すると認定書が付与されます。
夏期には、6日間で集中的に産業医学を学ぶ産業医学基礎研修会集中講座を開催しており、こちらも修了すると認定書が付与されます。

 

産業医研修の情報について

 

産業医研修に関する情報は以下の媒体から取得することが出来ます。

  • 日本医師会雑誌:毎月2回発行。原則、偶数月の15日号に、2〜3か月後までに開催される産業医研修の案内が掲載されます。
  • 日本医師会ホームページ
  • 都道府県医師会報:医師会により掲載の有無、掲載方法等が異なります。会報とは別に産業医研修情報の冊子を作成し、配布している医師会もあります。
  • 都道府県医師会ホームページ
  • 産業医学振興財団ホームページ
  • 産業医学ジャーナル:産業医学振興財団が開催する産業医研修の案内が掲載されています
  • 都道府県産業保健総合支援ホームページ

 

 

 

 

 

 

 

 


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