令和2年度診療報酬(調剤)改定を受けて薬剤師が身につけておくべきこと

今年令和2年度(2020年度)は、新型コロナウイルス感染拡大により、転職市場が大きく影響を受けている中、診療報酬改定も実施されました。令和2年度診療報酬改定については厚生労働省ホームページをご覧ください。

 

この診療報酬改定(ここでは調剤について)が薬剤師の転職市場にどのような影響を及ぼす、もしくは及ぼしていくことが考えられるか、現職の薬剤師専門の転職エージェントの方に伺いました。
今後、どのように推移していくか考察していきたいと思います。

 

診療報酬改定の概要

(1)診療報酬が改定された理由

医療費の透明性

調剤報酬などの医療費には、どのように費用が動いているのかという透明性が求められています。ただ、薬を製造している製薬会社にとっては、製造原価や研究開発費は企業秘密となっているものが多く、一般的に表に出てくることはありません。
製薬会社にとっては、自社製品の製造原価や研究開発費といった開発コストに関する情報が漏れてしまうと、他社も似たような薬品を製造することだってできかねません。また情報が表に出てしまうことで、製品の取引価格を算定する際に他社に有利に働いてしまいます。薬の価格を算定する際は、非公開情報を守りつつ、医療費の透明性を確保しなければなりませんが、調剤報酬の改定を行ったことで、薬価算定のプロセスや根拠が明確となり、適正で透明性のある医療費の算定が実現できるになったのです。

 

患者負担額の軽減

また、近年、調剤医療費は増加を続けています。国だけでなく、患者個人の負担額も年々増加傾向にあり、この費用を全体的にいかに軽減させていくかが課題となっています。
調剤医療費の増加には、医薬分業による院外処方への切り替えにより、入院外医療費が調剤医療費に繰り替わっているという要素があります。しかし、これは一部の医療費が名目上変わっているだけの話で、医療費全体としては調剤医療費も増加し、患者の負担額が増加し続けているのです。今後、高齢化と人口減少により、ますます患者の負担は増していきます。それを軽減するために調剤報酬を定期的に見直し、改定し、患者の負担額を軽減させなければならないのです。

 

 

(2)診療報酬改定による変化

調剤基本料2、3の対象が拡大

薬剤師として働いている方であれば、分かる話ですが、要は、利益が出ているところは厳しめに、国の方針である面分業をしているところは現状維持。敷地内薬局など処方が集中しているところはより厳しくなりますよ。という話です。

 

調剤基本料を算定している月1800回超〜2000回、かつ集中率95%超の薬局が調剤基本料2に移行します。今まで調剤基本料1(42点)を取っていた場所が、新たに調剤基本料2(26点)になってしまうのです。
具体的には門前薬局でマンツーマンに近いところが対象となります。

 

調剤基本料3の対象も同様に拡大しています。同一グループで、受付回数が月3万5000改超〜4万回、集中率95%超なので、これに該当するのは大手チェーン薬局だけと思われそうですが、先ほどお伝えしたマンツーマンに近い薬局を20店舗ぐらい抱えているような小規模チェーンも該当していくことになります。

 

調剤業務の変革

政府は薬剤師の対人業務の重要性に注目しています。対物業務に関しては、より効率化すべきという考えのもと、業務の変革に取り組んでいます。
これにより、調剤薬局では在宅やかかりつけ薬剤師などに積極的に取り組むようになっています。

 

特に在宅は施設や個人宅に伺い、しっかり服薬指導も行うよう言われております。その分店内のピンキングなど一部業務を薬剤師以外も可能とし、より患者に寄り添う形をとっていくよう方針を変えなければなりません。

 

また、オンライン処方にも力を入れ、オンライン処方の導入が求められるようになりました。大手薬局ではアプリの開発を行い積極的に動いていますが、中小企業の薬局はオンラインの情報、知識を得られず、中々ついていけていないのが現状です。さらに高齢化が問題となっている中、高齢者に対し、どのようにオンライン処方を利用してもらうのか、また利用できるようにしていくのか、オンライン処方の導入を求めつつも大きく課題が残っているのが現状です。

 

大手チェーンの減少

大手薬局やドラッグストアは全国で6万件あると言われています。「多すぎる」と見られているのが現状です。そこでドラッグストアが収益を上げづらい状況にし、将来的に3万件まで減らそうという動きもあります。少子高齢化が言われて久しく、すでに日本の人口は減少に転じている中で、大手薬局やドラッグストアチェーンの積極的な店舗拡大は、診療報酬(調剤)にも負担増にもつながってしまっているのです。

 

しかし、ただ減らすだけでは企業の収益に大きな打撃となってしまいます。そのため大手薬局では、その利便性を活かし、コンビニと提携する等の動きを取っています。業務提携をすることで、コンビニで調剤業務を行うことができます。利便性を活かすことで集客を増やし、生き残りを図ろうとしているのです。

 

重複投薬の解消に向けての評価

外来患者への重複投薬の解消に貢献した場合の評価も変りました。

 

例えば外来患者で合計6種類以上の薬剤を処方された方がいたとします。薬局ではその方の服薬情報を一元的に把握し、重複投薬の有無の確認を行った上で、処方医に重複投薬等の解消ができるよう提案を行うことで評価されるようになりました。

 

M&Aの増加

調剤報酬の改定による影響や最近問題となっている後継者問題により大手薬局の傘下に入る薬局が増えています。調剤報酬の改定に対して、薬局のあり方、業務の変更がついていかず、売り上げが下がってしまっている薬局の声を多く耳にします。その解決手段として、大手薬局の傘下に入り、売り上げを維持する薬局が増えています。

 

転職市場への影響

(1)転職市場の現状

質の高い薬剤師の採用

上記でもあったように、患者に寄り添った対応や在宅業務の増加など、今後はより対人業務に積極的な薬剤師の採用が求められることになります。過去であれば薬剤師が薬局を選ぶほどの余裕がありましたが、診療報酬(調剤)の改定を受けて、近年では薬局が薬剤師を選ぶように変わってきています。

 

中途に求める条件:重要となる在宅業務

中途採用にも変化があります。その一つが在宅業務をできるかどうかです。
調剤報酬の改定により在宅をより多くこなさなければ売り上げを上げることは難しくなってきています。そこで書類選考の際に在宅ができるか、企業からの確認されることになります。すでにこの確認は良くされるようになってきました。

 

二つ目は車の免許です。在宅でも施設に行くことや個人宅に行くこともあり、交通手段として車での移動が求められます。車の免許がないと面接の前に見送りになることも少なくありません。

 

転職の際上記の二つを確認されることが非常に増えています。在宅はやりたくないというお声をよくききますが、その考えのままだと、今後の転職は厳しくなってくるため、今のうちに在宅に関しての知識をつけておくべきでしょう。

 

(2)転職を成功させるための対策

在宅が出来ることのアピール

薬剤師の仕事で在宅が当たり前の業務になりつつあります。最近では派遣薬剤師も在宅に行くことが増えています。それに伴い車の免許も求められます。面接を突破するには、薬局の売り上げに貢献するためにどれだけ在宅に取り組む姿勢を持っているか、在宅の経験がどれだけあるかのアピールが必要となります。アピールをするために在宅の勉強をすること、車の免許を取得しておくことをオススメします。

 

対人業務がどれだけできるか

今までの面接ではそこまでコミュニケーション能力や傾聴力は見られていませんでした。それよりもどれだけ調剤の経験があるか、科目は何を経験されてきたかなどが見られていました。それが全く変わり、今では対人業務ができる人かどうかをまずは見られるようになってきました。しっかり言葉のキャッチボールができるか、寄り添った会話ができる人なのかが見られます。

 

今後、薬剤師が転職を成功させていていくには、調剤経験とはあまり関係がない部分が重要視されるようになります。しかしビジネスの世界ではどちらも今後必須となる力です。あまり経験がないから・・とあきらめるのではなく、今から面接対策などをしっかり行っておくべきでしょう。また普段の業務でも対人業務などには積極的に取り組み、力をつけておくべきです。

 

今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、あらゆる業界でオンライン化が進んでいます。また感染リスクが伴う医療関係者全体で見ても、このオンライン化は避けられない道です。だからこそ、オンライン化や対人業務など急激に変化している薬剤師の業界でも生き残っていく為に今何ができるかを考えておくことが必要となるのです。転職市場は新型コロナウイルスの感染拡大で急激に変化しています。誰もがまだ準備を始めていない、もしくは始めたばかりという状態です。少しでも早く取り組んでいくようにしましょう。

 

【まとめ】
いかがでしたでしょうか。今回の調剤報酬の改定や過去の改定により、薬局の業務、経営方針までもが変化しております。日本では高齢化が進んでおり今後も調剤報酬の改定はあるでしょう。特に2025年には団魂世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療費がこれまで以上に大きくなります。このタイミングで大きな改定があると予想されます。

 

こうなってくると転職活動も簡単にはいかなくなります。今まで何もせずとも内定がもらえたかと思いますが、政府が考えている方針、意向に合ったスキル、業務が出来なければ就職も難しくなるでしょう。しっかり対策をして面接に挑んでください。

 

 

引用:令和2年度診療報酬改定の概要(調剤) 厚生労働省保険局医療課

 


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